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な実施を図ることが必要になる。
しかし、既往研究では、環境価値を評価する方法として、入江ら1)による水域利用指標を用いた海域環境への適合度の検討や、中村ら2)による生物多様性指標(Tw値)を用いた生物群衆の評価等が検討され、特に港湾空間における水域利用において有効な方法論が提案されている。しかし、沿岸域計画における空間価値の取り扱いと定量化においては、沿岸域を自然と人間の共生を図りながら総合利用を進めるための行動方針に沿った空間価値評価と、より具体的な環境改善の方法論との合致合致まで言及していない。また、既往事例においては、環境改善工法の選択は、主として計画者に依存し、環境改善工法を選択する際の具体的な方法論やシステムが十分に明らかにされていないのが現状である。
そこで、本研究は、沿岸域計画において空間価値の評価方法を用いて環境改善工法の選定方法を提案し、適用例を通じてその有用性について検討するものである。
2. 空間価値の評価方法と環境改善工法の定義
(1)空間価値の評価方法環境改善を図る場合には、その環境の空間価値を定量的に把握する必要があり、本研究では、沿岸域の環境を定量的に把握する指標として提案した環境度3)を用いて検討する。環境度は、人文・社会条件に視点を置いた景観度と、自然条件に視点を置いた動植物生育度の2軸で構成されており、景観度は、
?人間が沿岸域で生活する上での土地利用・水域利用等に関する人間の活動を捉えた尺度としての間接条件
?人間に憩いと豊かさを与える景観上の空間価値を表す尺度としての直接的条件
より、また、動植物生育度は、
?海岸線等の地理的条件、水質・海象条件等の間接的条件
?動植物が生育していく環境の価値を捉えた尺度としての直接的条件
より評価項目を抽出し、評価項目毎に評点(0、1、2、3点の4段階)を設定し、Fig-1に示すポテンシャル評価ツリーにより、ウエイトを乗じ、Fig-2に示す環境度の空間価値として把握する。
(2)環境改善工法の定義
本研究では、前述したミティゲーションの概念に基づき、『環境改善とは、開発により低下した環境度、あるいは現況の環境度を高めることとし、景観度・動植物生育度いずれか一方でも現況の空間価値を下回ることがないこと』を前程条件として設定し、既往事例の環境改善工法の種類と効果に基づいて、環境改善工法の選定方法を提案するものとする。ここで、環境改善工法とは、環境度の値を上昇させることを主な目的とした工法とする。

074-1.gif

Fig-1 ポテンシャル評価ツリー

Potential estimation tree

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Fig-2 環境度の空間配置

Stationing in Environmental indicators

 

 

 

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